教育現場におけるEQの活用 > SEQの活用事例

大学正課の講義でのSEQ 採用〜工学部1年生全員受診

静岡大学生活協同組合 様

静岡大学工学部では、1年生の必修講義「工学基礎実習(前期)」「創造教育実習(後期)」において、 講義の効果測定を当初の目的とし、SEQ2回受診を教材として採用した。以下、採用にいたる経緯及び採用の理由、生協の関わりを報告する。


1.「工学基礎実習」「創造教育実習」の概要

 「工学基礎実習・創造教育実習」は、工学部1年生(約570名)の必修講義。工学部で必要な基礎 的技術を班での活動を中心に学ぶ。学生は月・火・水・金曜日にわかれて講義を受ける。1班8人が基本で、5学科混成で構成される。 後期の後半からは班ごとでロボットを製作し、2月にはロボットコンテストが行われる。

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2.採用の経緯

 2015年10月、静岡大学工学部東先生、生源寺先生から生協外販担当職員に、「SEQ について説明して欲しい」との依頼が入り、キャリア担当職員と共に訪問。 先生に事情を伺ったところ、講義の効果測定のツール(学生個人の変化が見えるもの)を探している中でSEQ に行きあたったとの事で、SEQ で何がわかるのか、 他の大学での活用例の紹介、講義で活用する際の生協からの企画提案等をプレゼンしてほしい、という要望をいただいた。
 同12月、静大生協からの企画案をプレゼン。その際、「全員2回受診+解説講座+受診データ提供+受診結果のプロファイリング」を提案。
 2016年1月正式に採用決定。SEQ 受診費用は学生負担で、解説講座費用は大学負担。
「以前と⽐較して工学部に入りたくて入ってきた学生が少ない」「将来の夢・やりたい事を持たない学生が多い」「主体的に考え行動する学生になってほしい」 打ち合わせを重ねる中で、先生から現在の工学部生に対しての想い(危機感)を聞く事ができた。
そんな想いの先生にとっては、「講義の効果測定」=「学生自身の成長の測定」であり、成長を測定するツールとしてSEQ に白羽の矢がたった形である。


3.SEQ講義スケジュール

時 期
詳 細
6月29日〜7月8日 1回目受診期間
講義内で先生から受診の指示。事前課題を実施。
7月講義最終週   解説講座
工学基礎実習の最終講義として実施(3 時間)
10月講義1週   ガイダンス
講義ガイダンスで個人・班での行動目標作成
グループに貢献するために自分自身の成長ポイントと行動目標をたてる
12月下旬     2回目受診期間
10月に設定した目標に対してのPDCA。最後の1ヶ月半どう行動するか考える
2月中旬      解説講座
講義&ロボットコンテスト終了後希望者に対して実施

1回目受診期間は、大学生活が⼀定落ち着いた頃に受診した方が2回目の変化がわかりやすくなる、という判断から7月となった。 2回目受診期間は、12月末に受診してこれまでの自分を振り返ることによって、1月から新たに自身の行動につなげてもらう狙いがある。
 1回目受診後、前期の最終講義として解説講座を実施。講師は東海事業連合森田さん(EQ トレーナー)に依頼。最初のプレゼンも森田さんにお願いしており、先生からの信頼を得ていた方にお願いした。


4.解説講座

 解説講座の準備は6月から開始し、講義の狙い〜進め方、グループワークの方法など2回の打ち合わ せなどで入念に行った。
 先生の学生に対する思いやこの講義を機に期待することをお聞きした上でオリジナルの解説講座(3時間)を構成することとした。 内容は「前期の講義を振り返り、自分自身の行動に気づき、今後の自分の成長ポイントをみつける」事に主眼を置き、 ①PDCA サイクルのチェックの重要性 ②EQ について学ぶ(感情の活用) ③意識化・言語化の習慣化の促しを大切なポイントとして盛り込んだ。
 講師は4日間の長丁場となるが、各曜日の特⾊を実感する目的もあり、全日森田さんで実施。各曜日の特⾊については、事前に先生方が〇曜日はアクティブ、〇曜日はまだまし、 〇曜日は⾮常に反応が悪い、など印象を伺っており、その印象がSEQ でどのように表れるのか、先生もとても興味を持たれていた。 (講義にグループワークが多めに盛り込んであり、何曜日がしっかりワークができるのか、SEQ のスコアとどうリンクしているのかという事も興味深かった。)
「きちんとワークができるのか」という先生の心配にもかかわらず、4日間通して(初日は少しバタついたが)、学生たちは座学に対しても熱心に⽿を傾け、 グループワークに対しても真⾯目に取り組んでいる姿が印象的だった。 先生からは「○曜日の学生がこんなに熱心にワークをするところを初めて見た」「○曜日は意外にワークに参加できない学生が見受けられる」 「普段は大学内部の⼈間が講義を行うだけだが、外部の講師を呼び、社会⼈としての⽴場から講義をしてもらう事がとても学生にとって刺激になっているようだ」 「目的意識がない学生もうっすらと目標設定ができたように思う」との感想をいただいた。
 講座後は各曜日の傾向についてSEQ 受診結果の集団平均値に表れている点などをプロファイラーの視点からフィードバックを行い、懇談も行った。


5.後期に向けて

講義のシラバスには、以下の事が書かれている。
 「大切な事はやる気を持つこと、自分の手を動かし工夫する事、自分で考えることです。この実習を通して生涯の友人ができたり、何よりもやってみると結構面白い事に気が付きます。」
 「チームとしての技術力、表現力やリーダーシップ・役割分担など、技術者に必要な組織としての力とチームの中で自己を実現する能力を体得する。」
 講義の後の振り返りミーティングでも、「ものづくり」は「ひとづくり」と先生が言われていた。
主体性であったり、コミュニケーションスキルであったり、将来のエンジニアとしての自らの成長課題を忘れずに意識させ続ける事が成長のカギになる。
 後期第⼀週の講義ガイダンスの際に、しっかりと自分のスコアの振り返りや後期の自分の行動ポイントをたててもらう事が重要である。 静大生協としても、学内でSEQ をもっと組合員にとって身近なツールとなるために告知の強化などを積極的に行う事で、学生が意識してEQ を発揮すること、開発することのアシストをしていきたい。

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国立大学法人 静岡大学
 静岡県静岡市の⼈文社会・教育・理・農、浜松市の⼯・情報、計6学部からなる総合大学。
 学部生約8567 名・大学院生約1531 名